【ル・マン完走までの物語】第2回
2014年6月21(土)【天馬天吉の今日の名言】
【ル・マン完走までの物語】第2回
■4月30日:WEC世界耐久選手権ベルギー戦欠場のお知らせ
辛く苦しい状況でも、誰も責めることなく、
努力し続ける姿勢が中野信治だ。
「開幕前のテストでは最速タイムを叩き出し
準備を順調進めてこれていただけに
現在の状況は残念でなりません。」
「起きてしまったことはもう変えられませんが、
誰かの責任にするとか、誰かを責めることには何の意味も感じません。
僕自身も可能性の灯がある限り、最後の最後まで諦めずに精一杯努力を続けます。
それが僕のスタイルであり信念なので。」
■5月7日:
わずかな可能性にかけてイギリス滞在を続ける中野に、さらに厳しい試練が次々と襲う。
しかし、その度にポジティブに考え、決して諦めない。
「スパへ参戦出来ないことが決まってからもう直ぐ1週間が経とうとしている。
先週の頭には更に厳しい知らせを聞くことになった。
ルマン24参戦の権利をチームが失ってしまったのだ。
チームのメインスポンサーからの入金の遅延により
エントリーに必要な手続きを完了することが出来なかったのが理由だ。
開幕戦シルバーストーン直前の青天の霹靂のような出来事から
更に難しい状況を突きつけられている。」
「この1週間僕は考え始めるとどうしようもないくらい重くなる頭を、
出来るだけ解放するべく時間を過ごすようにしてきた。
こちらに来てから徹底的に続けてきたトレーニングを淡々と続けることも忘れてはいない。
ルマン24参戦に向けては現段階でははっきりとした答えはない。
ただ一つだけ言えるのは、まだ諦めていないと言うことだけだ。
人事を尽くして天命を待ってみようと思う。」
■5月13日
中野の苦悩は続くが、「偶然の幸運」を信じて前へ進む。それが中野信治だ。
「第2戦のスパへの参戦が叶わないことを知った時は正直茫然自失だった。
その日だけはイギリスに来てからそれまで1日も休むことなく
続けてきたトレーニングにも行けなくなるくらい全身から力が抜けてしまっていた。
張り詰めていた緊張感が変な形で切れてしまったような感じだろうか。
前向きに物事を考えろと言われてもそうそう簡単にはいかない。
しかも立て続けにこのような出来事が起こると更にそれが難しくなる。
本当にピンチはチャンスなのだろうか?
この一ヶ月近くは信じられないくらい色々な事を考えさせられた。
何故こんなことが起こっているのか?
何故?
?????????
どれだけの事柄が頭の中を駆け巡ったことか...。」
「セレンディピティ。」
(ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運を掴み取る能力のことである。)
この言葉はいつもポジティブに思える出来事が起こった時にだけ使うようにしていた。
『偶然の幸運。』
僕の大好きな言葉だ。
この言葉には更に深い意味があるような気がしてきた...。」
「今回のイギリスでの2ヶ月間は僕にとっては原点回帰の時間になったとも思っている。
既に僕の中からネガティブな記憶は消えている。
いくら考えたところで過去は変えられない。
それよりもその時間を未来を創造することに使うべきなのだろう。」
「43歳になった僕が見たイギリスはあの頃から何も変わっていない。
でもほんの少し違和感がある。
18歳の時に初めて単身イギリスに渡った頃から比べると
ほんの少しだけ成長した僕がそこにいた。」